ご挨拶


2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロ化するという,「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて,エネルギー技術と情報通信技術の融合が加速しつつあります.i-パワードエネルギー・システム研究センター(Info-Powered Energy System Research Center, 通称iPERC)は,今後100年以上にわたって世界を支えてゆく次世代のエネルギーシステムの創出を目指し,プロファイル情報を付与してそれらと同化したエネルギー,すなわちInformation-powered energyとその基幹技術に関する研究を推進しています.

この度,市川晴久教授(2015年1月~2017年3月),新誠一教授(2017年4月~2018年3月),大川富雄教授(2018年4月〜2021年3月)の後を受けて, iPERCセンター長を務めさせていただくこととなりました.2016年に本学・iPERCに赴任し,専任教員,かつ初期からのメンバーとして初めてセンター長の任にあたることとなり,微力ながら精一杯努めて参りたいと考えております.

我々は,再生可能エネルギーの主力電源化を実現するエネルギープラットフォームは,多階層の構造をもつと考えています.すなわち,①エネルギーサービスを駆動させる上位のアプリケーション層と,②太陽電池,蓄電池,地熱発電などの多様な再生可能エネルギー資源や天然資源発電を結びつける下位のエネルギーリンク層と,そして③上位と下位が技術的発展や社会的進展で新しいものに置き換わったとしても駆動を維持できるエネルギートランスポート層から構成されるものと考えています.それぞれの実現に向けた研究体制として,専任教員として,市川晴久特任教授,早瀬修二特任教授,曽我部東馬准教授,澤田賢治准教授を中心に,協力教員と客員教員を迎えて,エネルギーマネジメントシステムの開発,高性能太陽電池の開発,量子物理・エネルギー学・人工知能の融合,デバイス・システムの信頼性・安全性・レジリエンス向上,電子制御システムの安全性・高性能化・セキュリティ強化等に関する最先端の研究開発などを進めています.

設立から6年を経て,iPERCのこれまでの研究の社会実装を加速すべく,企業や他大学との多角的な共同研究を展開しています.それらを通じて,産学両面から「分散型エネルギーシステムにおける情報通信技術と,エネルギー技術の融合」の領域を確立し,世界的拠点へ成長することを目指して参ります.

インターネットの起源であるARPANET(Advanced Research Projects Agency NETwork,高等研究計画局ネットワーク)が,国防の要として大学と研究機関によるプロジェクトにおいて開発されたように,Information-powered energyの研究は,変革や災害に対してレジリエントなエネルギープラットフォームとして,大学や研究機関を中心として推進すべきものと考えています.さらに,シェアリングを通じた共有から生まれる価値を基盤とした技術プラットフォームとしてそれを確立し,低炭素社会へのゲームチェンジや,現時点では存在していない新しいIoTベースビジネスの創出に貢献してゆくよう努めて参ります.

2050年の世界に向け,iPERCの活動へのご賛同と,研究にご参加,ご助力いただければ幸いです.どうぞよろしくお願いいたします.

i-パワードエネルギー・システム研究センター(iPERC)

センター長 横川 慎二